SOLANETS ELECTION WATCH / DAY 7
沖縄知事選を約6日ごとに序盤、中盤、後半に分け各期間におけるX上の動静の定点分析を実施。告示前日から9月1日までの序盤では約6.3万件の沖縄知事選を争点とするとみられる標本の収集がされ序盤のX上でのナラティブ空間の特徴が明らかになった。
可視的な発信量が最も大きかったのは玉城氏への批判であり、多数のアカウントに分散していた。古謝氏への批判には、少数の高頻度アカウントによる集中が見られた。一方、支持の投稿量は両候補で近い水準にあり、その中身は異なる。古謝氏への支持では陣営の標語と投票の呼び掛け、玉城氏への支持では平和や暮らし、実績が主要な主題となっていた。
投稿量は発信者の活動や反復の程度を映す指標であり、有権者の支持分布とは区別して読む必要がある。疑惑や違法行為を語る投稿の集計は、その内容の事実認定ではない。また、反復や集中の観測だけで影響力工作を断定することはできないため、Day7の本稿については必ずしも海外や不正な影響力工作のモニタリングについてを主題にしたものではないことを予めご容赦願いたい。
候補者名を含む分析対象投稿
玉城氏への言及
古謝氏への言及
複数の主題を含む投稿は複数計上
候補者名への言及を、辞書によって「支持」「批判」「中立・判定不能」に分類した。玉城氏は批判6,662件が支持3,308件の2.0倍、古謝氏は支持3,674件が批判2,229件の1.6倍である。支持投稿の量は3,308件対3,674件と近い。
| 候補・立場 | 投稿数 | アカウント数 | 閲覧合計(概数) | 上位10アカウント占有率 |
|---|---|---|---|---|
| 玉城氏・支持 | 3,308 | 1,365 | 461万 | 17.4% |
| 玉城氏・批判 | 6,662 | 3,494 | 1,230万 | 5.4% |
| 古謝氏・支持 | 3,674 | 1,190 | 612万 | 17.7% |
| 古謝氏・批判 | 2,229 | 841 | 736万 | 35.0% |
中立・判定不能は玉城氏7,994件(言及の約45%)、古謝氏4,072件(約41%)である。この中にも立場のある投稿が含まれる。支持・批判の数値は辞書による検出件数であり、見落としと誤分類の双方を含む。アカウント数は各区分内の異なる投稿者数であり、区分間で重複し得る。
発信の集中度には大きな差がある。玉城批判は上位10アカウントでも5.4%にとどまり、最多の1アカウントは62件であった。古謝批判は上位10アカウントが35.0%を占め、1アカウントが428件、全体の19%を投稿していた。支持側の上位10アカウント占有率は、両候補とも17~18%である。
閲覧合計も投稿数とは異なる姿を見せる。古謝批判の閲覧合計736万のうち、約240万は応援ポスターを揶揄する単一投稿による。合計の大きさを読む際は、広く分散した閲覧と、一つの投稿への集中を併せて確かめる必要がある。
玉城批判は8月26~31日に毎日900~1,150件と安定し、玉城支持は告示日の8月27日から31日まで500~580件で推移した。古謝支持は告示日に174件から582件へ増え、その後8月31日までは560~690件となった。古謝批判は8月26日の97件から8月30日の520件まで増加し、「統一教会」の主題も8月30日に最多となった。9月1日は16:53までの部分集計であり、玉城支持222件、玉城批判462件、古謝支持331件であった。
ここでいうナラティブは、投稿に繰り返し現れる主題のまとまりである。「支持」「批判」という立場と、何を語っているかという主題を別々に判定し、その対応を図にした。以下の「統一教会との関係」「親中・中国の工作」「公選法違反」などの名称は、投稿内の主張・批判・疑いを分類するラベルである。各ラベルの件数は、その言説を含む投稿の数を表す。
玉城批判には「左翼・活動家」「転覆事故」「県政停滞」、古謝批判には「統一教会」「傀儡」「極右・カルト」などの主題が集まる。一方、「デマ」「暮らし・経済」「情勢」は複数の立場から使われ、図の中央付近に位置する。同じ話題が、支持を語る文脈にも批判を語る文脈にも現れる構造である。
1投稿が複数の主題を含む場合は、それぞれに計上する。以下の表は正本で取り上げた主要主題の抜粋であり、全主題の順位表ではない。主題の件数を足し合わせても、支持・批判の投稿総数とは一致しない。
| 投稿内の主題 | 投稿数 | アカウント数 |
|---|---|---|
| 平和・非戦・戦場にしない | 283 | 187 |
| 暮らし・経済・物価・所得 | 197 | 137 |
| 若者・投票率・動員 | 112 | 76 |
| 統一教会との関係(古謝批判を伴う文脈) | 109 | 47 |
| 「デマ」への反論・応酬 | 87 | 61 |
| 辺野古反対・基地負担 | 80 | 61 |
| 子育て・福祉・実績 | 78 | 53 |
最多は「平和・非戦・戦場にしない」で、283件、187アカウント、閲覧合計58万であった。「暮らし・経済」は197件、「子育て・福祉・実績」は78件で、後者の閲覧合計は51万となった。政策や実績を挙げる支持と、相手候補への批判を通じた支持表明が併存している。
閲覧の大きい例には、沖縄タイムスによる第一声動画「平和守り、明るい未来を実現」(約35万閲覧)、玉城デニー応援 市民ボランティアセンターによる「デマ」への反論と実績を訴える投稿(約19万閲覧)、給食費の補助・無償化を支持理由として挙げた投稿(約8.8万閲覧)がある。標語タグ「#やっぱりデニー」は363件、97アカウントに使われた。
| 投稿内の主張・批判の主題 | 投稿数 | アカウント数 |
|---|---|---|
| 左翼・共産党・活動家との結び付きを批判 | 1,978 | 1,170 |
| 辺野古沖転覆事故・警備員死亡事故の責任を問う言説 | 1,297 | 752 |
| デマ・偽情報の応酬 | 769 | 512 |
| 公選法違反・選挙妨害をめぐる言説 | 726 | 524 |
| 辺野古反対・基地負担をめぐる批判 | 579 | 387 |
| 玉城氏側の公選法違反・選挙違反を疑う言説 | 497 | 376 |
| 親中・中国の工作・媚中とする言説 | 455 | 316 |
| 県政停滞・8年間実績なしとする言説 | 428 | 356 |
最多は「左翼・共産党・活動家との結び付き」を批判する言説で、1,978件、1,170アカウント、閲覧合計254万であった。次いで事故の責任を問う言説が1,297件、752アカウント、閲覧合計156万となった。辺野古反対を争点化することへの批判や、のぼり・募金などをめぐって選挙違反を疑う投稿も含まれる。
「親中・中国の工作」は件数で7番目、閲覧合計は約27万であり、この期間の玉城批判では件数・閲覧の両面で主要な主題ではなかった。これは外国の関与を主張する言説の出現状況であり、工作の存在を立証するものではない。
| 投稿内の主題 | 投稿数 | アカウント数 |
|---|---|---|
| 「沖縄を前に」などの標語・停滞打破 | 1,595 | 317 |
| 若者・投票率・動員 | 672 | 234 |
| 暮らし・経済・物価・所得 | 420 | 129 |
| 参政党・保守党・百田氏らとの連携 | 242 | 135 |
| 県政停滞を批判する言説 | 174 | 58 |
| 左翼・共産党・活動家を批判する言説 | 133 | 102 |
| 中国からの奪還・安全保障を訴える言説 | 101 | 47 |
「沖縄を前に」「次のステージへ」「刷新」「取り戻す」などの標語を含む投稿は1,595件で、古謝支持投稿の43%を占めた。投稿者は317アカウント、閲覧合計は305万である。若者・投票率・動員672件、暮らし・経済420件が続く。
支持投稿には「県政停滞」174件、「左翼・活動家」133件など、玉城氏への批判を組み合わせたものもある。「参政党・保守党との連携」は、推薦を肯定的に紹介する支持側242件と、批判側410件の双方に現れた。同じ連携をめぐる話題が、立場により異なる意味付けを与えられている。「#沖縄を前に」は1,042件、162アカウントに使われた。
| 投稿内の主張・批判の主題 | 投稿数 | アカウント数 |
|---|---|---|
| 統一教会との関係を問う言説 | 471 | 252 |
| 参政党・保守党・百田氏らとの連携を批判 | 410 | 118 |
| 自民・中央政府の「傀儡」とする言説 | 344 | 56 |
| 極右・ヘイト・カルト勢力と同一視する言説 | 279 | 112 |
| デマ・偽情報の応酬 | 240 | 152 |
| 人物・ポスター・経歴の揶揄 | 139 | 83 |
| 基地推進・戦場化への懸念 | 72 | 59 |
| 「誰かのせいにしない」発言への反発 | 55 | 47 |
最多は「統一教会との関係」を問う言説で、471件、252アカウント、閲覧合計231万であった。政党や政治家との連携を批判する言説410件が続く。「自民・中央政府の傀儡」とする言説は56アカウントで344件に達しており、1アカウントによる「#自民党政権そこをどけ」の反復が件数を押し上げていた。
「人物・ポスター・経歴の揶揄」は139件、83アカウントである。この主題の閲覧合計約255万のうち、約240万を単一投稿が占める。主題の広がりを判断するには、投稿数、投稿者数、閲覧の集中を同時に見る必要がある。
立場付き投稿のある5,469アカウントを、投稿の得点から「玉城側」1,395、「古謝側」3,850、「不明」224に分けた。これは観測した投稿からの機械推定である。以下ではこの推定区分を用いて、誰から誰へ返信・引用が向かったかを集計する。
| 発信側 → 接触先 | 件数 |
|---|---|
| 古謝側 → 古謝側 | 5,862 |
| 古謝側 → 玉城側 | 1,601 |
| 玉城側 → 古謝側 | 1,443 |
| 玉城側 → 玉城側 | 1,500 |
古謝側は陣営内への接触が陣営外の3.7倍である。玉城側は陣営外1,443件と陣営内1,500件がほぼ同数となった。相手陣営への返信・引用を各区分のアカウント数で割ると、玉城側1.03件、古謝側0.42件で、約2.5倍の差がある。
古謝氏公式への1,313件は古謝側641件、玉城側416件、不明256件であった。玉城氏公式への690件は玉城側266件、古謝側252件、不明172件である。玉城氏公式は自陣営とほぼ同数、古謝氏公式は自陣営の6割超に当たる接触を相手陣営から受けていた。
山添拓氏など玉城氏を支援する側のアカウントや、産経ニュース、沖縄タイムスなどの報道機関にも、古謝側と推定されたアカウントから多くの接触があった。接触数と、接触を受けるアカウント自身の立場は区別する必要がある。
「玉城側」「古謝側」は所属や実際の支持先を確認した分類ではなく、採取した投稿の立場から推定した区分である。立場付き投稿が少ない場合や、引用・批判の帰属を誤った場合には誤分類が生じる。元集計では山添拓氏や沖縄タイムスが「古謝側」と推定される例があり、個別の所属判定にはそのまま使えない。
同じ投稿で使われるタグを結ぶと、玉城支持17タグ、古謝支持14タグ、反古謝の定型タグ束8タグ、参政党・保守党関連7タグ、辺野古・公職選挙法違反の五つの集団が現れた。
玉城支持の集団には「#やっぱりデニー」363件・97アカウントが含まれる。古謝支持の集団では「#沖縄を前に」が1,042件・162アカウント、「#沖縄を次のステージへ」が327件・33アカウントであった。後者の集団には転覆事故に関するタグや「#日本共産党」も入り、古謝支持と玉城批判が同じ投稿で結び付いていた。
反古謝の定型タグ束には、選挙の投稿に「#高市やめろ」「#ヤバすぎる緊急事態条項」「#米国産生ジャガイモ解禁に反対します」「#ICC赤根所長を守れ」などの国政争点をまとめて付す形が見られた。8タグのうち5タグは、2~10アカウントの投稿による。
政党関連の集団では、「#参政党」などが両方の推定区分から使われる一方、「#自民党政権そこをどけ」249件は1アカウント、「#参政党に騙されるな」159件は4アカウントによる反復であった。タグの出現件数が増えることと、使用する人の広がりは同じではない。
採取は当社のSNS一次データ収集分析システムOmni Oculusを利用し期間中1日1~2回実施した。複数のキーワードを利用し1語1回の取得上限は約3,000件で、同一投稿IDの重複を除いた。検索語はいずれも引用符なしで実行しており、語が単語に分割されて一致する。そのため、検索語の完全な語句を含まない投稿も採取範囲に入る。
その後、本文に沖縄、琉球、知事選、候補者名、辺野古などの対象語を含む46,770件を母集団とし、候補者言及を抽出した対象規模が24,512件である。候補別の立場判定では、日本語・言語未判定という条件と候補者名の表記条件を適用した。対象の89%は候補者・選挙群の語で採取されている。愛称だけで語られる投稿は他の検索語を含む場合に限られるため過少となる。「最新」タブの検索表示と取得上限による欠落があり、投稿数・閲覧数は採取で到達できた範囲の下限値である。この採取上の制約と、立場判定の見落とし・誤分類は別の条件である。
支持・批判は、本文の手掛かり語、候補者名を含むハッシュタグ、陣営標語、方向性をもつ話題を得点化して判定した。候補者名を含む立場付きタグや標語は2点、本文の手掛かり語・話題は各1点とし、支持点が上回れば支持、批判点が上回れば批判、同点または0点なら中立・判定不能とした。両候補に言及する場合、本文の手掛かりは候補者名から30文字以内のものを帰属させた。主題は24種類の辞書で判定し、複数計上した。
無作為に抽出した80件(各候補40件)の目視確認では、一致70件、誤判定7件、判定困難3件であった。判定困難3件を除く77件に対する一致率が約91%である。皮肉・反語、否定形、両候補併記時の帰属が主な誤判定の型であり、この一致率は80件の確認標本に基づく値である。
アカウントの推定区分は、(玉城支持+古謝批判)-(玉城批判+古謝支持)が正なら玉城側、負なら古謝側、0なら不明とした。図11の色付けには、立場付き投稿3件以上かつ得点差の絶対値2以上という追加条件を設けた。
返信・引用は計21,118件から集計した。自己返信を除き、引用先は採取データ内にある場合に投稿者を特定し、1投稿につき1件、返信を兼ねる引用は返信として数えた。ハッシュタグは候補者名を含む投稿から抽出し、候補者名そのものや汎用タグを除外した。同じタグの組合せが3件以上の投稿で共起した関係を結び、小規模な孤立成分を除いて集団を求めた。
玉城氏への批判は、投稿量の大きさに加え、3,494アカウントへの分散が特徴であった。玉城氏への顕著な批判の集中については二次的追跡調査により県外の有権者以外のいわゆる”越境選挙” / “二馬力選挙”の構造がデータから見え隠れしている。このことについてはまた別項で取り上げることを予定している。
ナラティブの主題は「左翼・活動家との結び付き」への批判と事故の責任を問う言説が中心で、中国関連の言説は主要な位置を占めなかった。古謝氏への批判は、統一教会や政党との関係をめぐる言説が中心となり、少数の高頻度アカウントと、一部の高閲覧投稿が量を押し上げていた。
支持投稿の量が近くても、語り方は異なる。古謝支持は標語や動員の定型性、玉城支持は平和や暮らし・実績を語る主題が目立つ。返信・引用では候補公式が相手側からも接触を受け、ハッシュタグでは支持と相手候補批判が同一投稿で結び付く様子が見られた。件数、発信者数、閲覧の集中、言説の組み合わせを併せて読むことが、この期間のX上の発信を把握する基礎となる。
出典・作成:株式会社Sola.com「2026年沖縄県知事選挙 X投稿データ分析(8月26日~9月1日採取分)」(2026年9月2日作成、9月4日改訂)の参考章、採取方式、集計定義および付属集計表。図8~12は同分析による。