SOLANETS ELECTION WATCH / FINAL OBSERVATION
選挙戦の終盤から投開票後にかけて、X上の話題はどう変わったのか。2026年9月8日夜から15日までに観測した112,603投稿、40,059アカウントを対象に、両候補への言及、支持・批判の主題、返信・引用の構造を振り返る。
投稿量は前の観測期間の1.71倍、投稿アカウント数は2.01倍となった。支持に分類された投稿は両候補とも選挙運動最終日の9月12日に多く、玉城氏への批判に分類された投稿は翌々日の14日に最多となった。投票を呼び掛ける局面から、結果に意味を与える局面への変化が見える。
観測期間:2026年9月8日18:39〜9月15日23:45(日本時間)。本稿はDay11に続く、今回の沖縄知事選連載の最終回である。集計は採取できた投稿の範囲に限られ、X全体や有権者の支持分布を示すものではない。
分析対象の投稿
前期間比 1.71倍
分析対象の投稿アカウント
前期間比 2.01倍
候補者名を含む投稿
前期間比 1.58倍
9月14日の投稿数
今回の観測期間で最多
図はクリックまたはタップで拡大できる。
01 / VOLUME投稿者は約2倍へ。投稿数と反応数は同じ増え方ではない
採取分は132,695件で、同一投稿IDの重複15件を除くと132,680件となった。このうち、沖縄・琉球・知事選・候補者名などの対象語を本文に含む112,603件を分析対象とした。
| 指標 | 9月2日〜8日 | 9月8日夜〜15日 | 比 |
|---|---|---|---|
| 分析対象の投稿 | 65,779件 | 112,603件 | 1.71倍 |
| 投稿アカウント | 19,950 | 40,059 | 2.01倍 |
| 候補者名を含む投稿 | 43,222件 | 68,096件 | 1.58倍 |
| 閲覧数の合計 | 1億6,932万 | 2億1,800万 | 1.29倍 |
| リポスト数の合計 | 156.7万 | 149.0万 | 0.95倍 |
投稿するアカウントの広がりは大きかった一方、リポスト合計は前期間を下回った。発信量の増加を、そのまま一つひとつの投稿の拡散力の増加と読むことはできない。閲覧数は投稿ごとの表示値の合計であり、重複のない閲覧者数ではない。
9月13日20時を境に分けると、それ以前は61,271投稿・19,357アカウント、それ以後は51,332投稿・27,808アカウントであった。後半の約2.2日間だけで、前半の約5日間より多くのアカウントが現れた。後半の投稿アカウントのうち20,702、約74%は、今回の前半の観測範囲には投稿がなかった。これは観測期間内での登場を意味し、アカウントの新規開設を意味しない。
前期間は9月2日00:00〜8日18:39、今回は9月8日18:39〜15日23:45で、期間の長さは同一ではない。各数値は同じ長さに換算した日平均ではなく、採取時点の期間合計である。
02 / MENTIONS & DIFFUSION投開票後は、玉城氏への言及が再び増えた
候補者名を含む68,096投稿は、玉城氏のみ33,972件、古謝氏のみ23,697件、両候補10,427件である。9月12日は両候補への言及が増え、13日は古謝氏のみの言及4,465件が玉城氏のみの4,084件を上回った。一方、14日は玉城氏のみが7,732件となり、古謝氏のみの3,878件を大きく上回った。

リポスト上位15投稿のうち、投開票前が9件、投開票後が6件であった。投開票前には、転覆事故、選挙妨害、公選法違反疑いを論じる投稿が目立った。投開票後には、当選を伝える挨拶、振興予算をめぐる論評、他の知事選への言及などが上位に入った。ここで記すのは投稿内容の変化であり、投稿に含まれる疑いや批判の事実認定ではない。
候補者公式アカウントへの引用は古謝氏1,237件、玉城氏1,195件と近かった。返信は古謝氏2,558件、玉城氏932件である。玉城氏への返信は投開票後39件に減ったが、ゼロではない。返信設定の変更は確認できていないため、この減少だけから返信欄の制限を断定しない。
リンク先ではYouTube関連ドメインが計6,060件、Yahoo!ニュースが3,511件であった。同一YouTube動画を4アカウント以上が共有したまとまりは194から331へ増えた。同じ動画へのリンクが複数の投稿に現れること自体は、投稿者間の組織的な連携を示すものではない。
03 / SUPPORT, CRITICISM & NARRATIVES支持の山は最終日、批判の山は投開票翌日に
候補者名と言語の条件を適用し、玉城氏への言及44,346件、古謝氏への言及34,075件を、手掛かり語によって支持・批判・中立・判定不能に分類した。両候補を含む投稿は双方に数えているため、二つの対象数は足し合わせない。
| 候補・立場 | 前期間 | 今回 | 今回の投稿アカウント |
|---|---|---|---|
| 玉城氏・支持 | 5,587 | 7,102 | 3,200 |
| 玉城氏・批判 | 9,311 | 18,528 | 9,260 |
| 古謝氏・支持 | 7,771 | 10,580 | 3,600 |
| 古謝氏・批判 | 4,643 | 6,171 | 3,170 |
機械判定では、玉城氏への批判が支持の約2.6倍、古謝氏への支持が批判の約1.7倍となった。支持に分類された投稿は両候補とも9月12日に最多となり、玉城氏2,242件、古謝氏2,950件であった。14日には支持がそれぞれ718件、993件へ減る一方、玉城氏への批判が5,307件、古謝氏への批判が1,378件となった。

この分類で読めること・読めないこと
元となる調査分析で80件を目視した結果は、一致61件、誤判定14件、判定困難5件である。結果への言及を支持や批判と取り違える例があり、玉城支持の定型文276件が玉城批判に入ったことも確認されている。表・図は元集計の値を保持し、実際の支持・批判件数の確定値とは扱わない。特に誤分類の影響が大きい立場別の閲覧合計は掲載しない。
玉城氏——暮らし・平和の支持と、「左翼・活動家」「デマ」をめぐる批判
支持に分類された投稿では、暮らし・経済601件、平和・非戦511件、「デマ」への反論・応酬373件が多かった。批判に分類された投稿では、「左翼・共産党・活動家との結び付き」を論じる主題が4,804件、「デマ」の応酬が3,124件、転覆事故や警備員死亡事故の責任を問う主題が2,109件となった。「県政停滞・8年間実績なし」とする言説も655件から1,801件へ増えている。

古謝氏——標語・投票の呼び掛けと、経済・基地政策への批判
支持に分類された投稿では、「沖縄を前に」などの標語と停滞打破が4,384件、若者・投票率・投票の呼び掛けが1,873件、暮らし・経済・所得が921件となった。一方、批判に分類された投稿では「デマ」の応酬1,353件、暮らし・経済・所得1,064件、「基地推進・戦場化への懸念」を示す言説709件が上位である。
前期間の古謝氏批判では、参政党・保守党等との連携や、「極右・カルト」「傀儡」とする主題が多かった。今回は、暮らし・経済が163件から1,064件、基地政策への懸念が144件から709件へ増えた。支持者や関係団体を論じる話題に加えて、所得や基地政策をどう評価するかという話題が目立つようになった。

04 / REPLIES, QUOTES & HASHTAGS同じ側への共有と、相手側への接触
投稿の分類を基にアカウントを機械的に分けると、玉城側3,755、古謝側10,419、不明882となった。この区分は観測された投稿からの推定であり、実際の所属や本人の支持表明を確認した名簿ではない。
| 発信側 → 相手側(機械推定) | 件数 |
|---|---|
| 古謝側 → 古謝側 | 15,155 |
| 古謝側 → 玉城側 | 3,437 |
| 玉城側 → 古謝側 | 4,464 |
| 玉城側 → 玉城側 | 2,997 |
元集計では、古謝側に分類されたアカウントは同じ側への返信・引用が多く、玉城側では相手側への接触が同じ側を上回った。ただし、先述の定型文の誤判定はアカウントの区分にも波及しているため、差の大きさは暫定的な値として読む。返信や引用は、賛同だけでなく反論・紹介・問い掛けも含み、その件数を攻撃の回数とみなすことはできない。
継続して追跡した支持ハッシュタグは、古謝氏側3,703件・595アカウント、玉城氏側1,674件・306アカウントであった。投開票後には、それぞれ276件、10件へ急減した。一方、新たに目立った「#古謝げんた手取り2倍ウソ」は503件・99アカウントが使用していた。このタグは従来の支持・批判タグの集計辞書には含まれていないため、同じ表の一部としては扱わない。
候補者名を含む投稿のタグ同士のつながりを見ると、候補者名そのものと汎用タグを除いた上位70タグのうち、55タグが共起関係で結ばれ、九つのまとまりに分かれた。支持を表すタグ、相手候補を批判するタグ、政党や政策を論じるタグが同じ投稿で併用される構造である。タグの数の増加と、それを使うアカウントの広がりは分けて捉える必要がある。
技術的な補足——bot風アカウント群に見られた投稿の反復
技術的に興味深いのは、投稿内容の類似だけでなく、複製が特定の時間帯に重なった点である。アカウント表記や投稿行動の類似を手掛かりに点検対象とした96アカウント・115投稿のうち、54アカウントによる55件の複製投稿を確認した。先行する投稿の本文を転記し、末尾の絵文字などに小さな変更を加える例が見られた。
| 観測項目 | 結果 |
|---|---|
| 複製を行ったアカウント | 54アカウント |
| 複製投稿 | 55件 |
| うち9月13日20時以降 | 51件 |
| 投開票後の5つの時間帯に集中した複製 | 51件中42件 |
| 複製投稿1件当たりの閲覧数 | 採取時点で0〜343 |
複製された文面には、両候補への支持・批判に加え、ニュースや雑談も含まれた。したがって、複製の存在だけで、特定候補を支援する一貫した運用と判断することはできない。また、原文を投稿した人が、複製したアカウントと関係していることを示すものでもない。
「bot風」は、表記や投稿行動に規則性が見られることを表す呼称であり、自動投稿を確認したという意味ではない。点検対象96アカウントには、表記の偶然の一致とみられるものも含まれる。開設日時や運営主体は確認しておらず、投開票後に初めて観測されたことを、新規開設や大量作成の証拠とは扱わない。閲覧数も採取時点の表示値であり、これだけで影響の有無や選挙結果への効果は判断できない。
この補足の点検対象は、本文の分析対象112,603件より広い全採取分から抽出した。ここで示すのは確認できた複製の集計であり、botの総数や検出率ではない。内容・時刻・表記の複数の手掛かりを組み合わせ、類似しているという観測と、運用目的の推定を分けて読む必要がある。
05 / ASSESSMENT & METHOD最終週から見えたこと——ナラティブの偏りは投開票結果後も続く
選挙におけるインターネット空間の舌戦は、選挙運動の最終日から投開票日までを一つのクライマックスと見ることもできる。しかし今回の観測では、結果の判明後も発信が重なり、議論が盛り上がる傾向が顕著であった。支持に分類された投稿は両候補とも9月12日に最多となった一方、玉城氏への批判に分類された投稿は14日に最多となり、観測を終えた15日にも続いた。古謝氏をめぐっては経済や基地政策を論じる主題が上位に来た。候補者への言及量と支持・批判の主題の非対称は、投開票後にも残ったのである。
組織的なナラティブの拡散や、それに伴う影響力工作の懸念を考えるうえでも、投開票を観測の終点としないことが重要である。勝敗をどう説明し、誰に責任を求め、次の争点へどう結び付けるかという語りは、結果が出た後もしばらくは世論をリードし、議論や対立を増幅する働きを持ち得る。今回確認したのは、9月15日までの観測範囲で、発信の焦点が投票の呼び掛けから結果の意味付けや政策への評価へ移りながら、偏りを伴う拡散が続いたことである。組織的な運用の有無や、実際に世論がどの程度変化したかを立証したものではなく、観測された傾向とその作用は分けて検証する必要がある。
選挙前の発信と、結果を受けた評価は、同じ候補者名や同じ言葉を使っていても意味が異なる。投開票をまたぐ今回の分析では、その変化を従来の判定辞書が十分に捉えきれない例もあった。投稿数・投稿者数・主題・返信と引用を組み合わせ、分類の誤りを含むことを明示して読む必要がある。
Day7からDay11、そして今回まで、連載で追ったのは、採取した投稿の中で何が語られ、どう広がり、誰に反応が集まったかという言論空間の変化である。投稿の多さをそのまま民意とみなすことも、似た発信の集まりだけで組織的な働き掛けと判断することもできない。本稿の掲載範囲は、候補者をめぐる言説と拡散の調査分析である。
採取・集計・判定の条件
選挙戦への効果を狙ったキーワードとして想定した50近くのキーワードで収集した。検索表示と取得範囲による欠落を含み、全投稿を網羅した調査ではない。
同一投稿IDの重複を除き、対象語を含む投稿を分析対象とした。9月13日20:00を投開票前後の区切りとする。候補者への言及量と支持・批判分類では言語等の抽出条件が異なるため、対象数も異なる。前期間の比較値には、今回と同じ集計処理で計算した値を用いた。
立場と主題は辞書で分類し、複数の主題を含む投稿は重複計上した。投稿アカウント数も立場の区分をまたいで重複し得る。目視確認80件の内訳は、一致61件、誤判定14件、判定困難5件であり、元集計はこの確認による補正を行っていない。検出件数には見落としと過大計上の双方がある。
相互作用は、自己返信・自己引用を除き、返信と、引用先が採取データ内にある引用を別々に数える。返信を兼ねる引用は双方に計上されるため、重複のない投稿件数ではない。アカウントの機械的区分は投稿の支持・批判得点に基づき、誤判定の影響を受ける。