SOLANETS ELECTION WATCH / SIDE STORY 03
twitter botネットワーク疑い
似た名前、重なる時刻。
その背後にネットワークはあるか。
AI生成のイメージ図。実際のアカウントや接続関係を示すものではない。
最終回で触れた「bot風アカウント群」を、告示前日からの3週間分のデータで追う。IDの並び方はなぜ似ているのか。表示名、初めて観測された時刻、他者の文面の転記には、どのような規則性があったのか。個々のアカウント名を示すのではなく、集計からその輪郭を描く。
本稿の「twitter botネットワーク疑い」は、共通する表記や投稿行動から生じた検証上の問いである。「bot風」は表記・行動の規則性を指す呼称であり、自動投稿や共通の運営主体、組織的な連携を確認したという意味ではない。
観測期間:2026年8月26日00:00〜9月15日23:45(日本時間)。3回の採取分を統合し、同一投稿の重複を除いた287,517投稿・77,831アカウントを基に点検した。X全体のbotの総数や検出率を示す集計ではない。
点検対象のアカウント
形式が一致しただけの例も含む
点検対象による投稿
採取できた範囲の合計
70アカウントによる
先行する文面の転記
投票終了後に初めて観測
新規開設を意味しない
図はクリックまたはタップで拡大できる。暗い色調のヘッダはイメージ表現、以下の図表は調査分析の集計である。
点検対象には、二つの目立つID形式があった。規則Aは「英語の名前+数字2桁+英字2文字+数字1桁」で、全て小文字である。規則Bは「英語の姓名を連結したような文字列+数字5桁」である。
文字列の構造を示す模式図。実在する完全なIDは示していない。
規則Aに一致する日本語アカウントは97であった。このうち12は、表示名と投稿行動が一般の利用者と変わらない、形式の偶然の一致とみられる例として分けた。IDの文字構造の分析には、残る85アカウントを用いた。
全体の点検対象116には、この「一致のみ」の12も含む。内訳は規則Aの97、規則Bの12、その他の形式で表示名と複製への関与を手掛かりに含めた7である。116という数は、botと確認した数ではない。
規則Aの85アカウントでは、名前部分は66種類、最多でも4件、上位5種類で約19%であった。名前は少数の語だけを繰り返したものではなく、広い語彙に分散している。

数字の3か所をそれぞれ点検した分布と、英字2位置を合算した分布では、0〜9、a〜zへの一様分布からの統計的な偏りを検出できなかった。名前の語彙と数字・英字を組み合わせる生成方法と整合するが、この検定だけで乱数生成や自動作成を立証できるわけではない。
規則Bの形式には全採取分で2,073アカウントが一致した。形式だけで対象を絞り込めるものではなく、本稿では表示名のテンプレートと複製行動が重なる12アカウントを点検対象に含めた。現在のIDと表示名の組合せから、登録時の名前や改名の順序まで確定することはできない。
点検対象116アカウントのうち101は、表示名が「日本語の女性名+@+趣味・属性」の形式に沿っていた。名前部分は82種類、趣味・属性部分は78種類で、同じ表示名を2アカウントが使う例は1組であった。
上記は趣味・属性部分の語例であり、完全な表示名ではない。美容・カフェ・推し活など、消費や日常の趣味を表す語が並ぶ。こうしたプロフィール表現は、本人の年齢や性別を確認したものではない。
同じ形式は一般の利用者にも広く、全採取分で1,454アカウントが一致した。点検対象外の1,353では、属性部分に「沖縄」「低浮上」「戦争反対」「行政書士」といった地域、投稿頻度、政治的立場、職業を示す語が上位にあった。点検対象ではこれらがほとんど見られず、形式だけでなく、そこに入る語の選び方にも違いがあった。
点検対象が初めて観測された週は、第1週9、第2週11、第3週96である。82アカウントは投票終了の9月13日20:00より後に初めて観測された。9月14日だけで61に達し、全採取アカウントでも初出が最も多かった日と重なった。ここでいう初出は、この3週間の収集範囲内の初出であり、アカウントの開設や利用開始ではない。

3週間で確認した複製は72件、行ったアカウントは70であった。原文から複製までの遅れは中央値約45分。30分以内が28件、6時間を超えるものも15件ある。
投票終了後の複製52件のうち43件は、5つの時間帯のまとまりに入った。最大は9月14日7:00〜7:30ごろの16件で、投稿間隔の中央値は約45秒である。間隔は最短1秒未満から最長約12分まで広がり、多くは2分以内だった。一定間隔の連投ではなく、短時間の集中と間隔の揺らぎが同時に見られた。

曜日と時間帯では、月曜7時台と日曜21時台への集中が目立った。それぞれ9月14日朝、13日夜の投稿が中心である。小さな点検対象の分布であり、一般的な曜日習慣と読むより、今回の具体的な日時の集中として捉えるのが適切である。
116アカウントのうち105、約91%は、期間中に採取できた投稿が1件だけだった。最多でも8件である。147投稿のうち139件、約95%は返信でも引用でもない独立したツイートで、返信と引用は各4件であった。
元となる調査分析の比較対象76,283アカウントでは、投稿1件のみが約59%、返信と引用は投稿の約6割を占めた。ハッシュタグを含む投稿は点検対象で約8%、比較対象で約32%である。この比較対象は、同じ週に初めて観測され、表示名テンプレートに一致しない一般アカウントとして元集計で扱われたものであり、X全体の無作為標本ではない。
採取時点の1投稿当たり閲覧数は、点検対象の中央値60、比較対象117で、点検対象の最大は1,970であった。点検対象の投稿で、いいねが0は約86%、リポストが0は約94%を占める。今回採取した範囲では、他者とのやり取りや目立った反応は少なかった。

投稿クライアントの記録では、109アカウント、約94%が「Twitter for iPhone」であった。自動投稿ツールの名称は現れていない。ただし、クライアント名だけで、実際の操作が人によるものか自動化されたものかを判定することはできない。
複製72件の原文は46アカウントによるもので、56件は点検対象の外、16件は内の投稿だった。原文は70件が独立したツイートで、閲覧中央値は313、10万を超えるものも10件あった。複製側の閲覧中央値は58であり、原文の大きな表示数が、そのまま複製側でも得られたわけではない。
末尾に付け加えられた絵文字は35種類、最多でも5件であった。本文を転記しながら、末尾には小さな変化を加える行動である。
第3週の複製56件のうち、原文も第3週に投稿された55件を目視分類したところ、古謝側27、中立や雑談16、玉城側12であった。古謝側が最多だが、玉城側や中立の文面も含む。複製が一貫して一候補の支持だけに向けられていたとは判断できない。原文の投稿者が、複製したアカウントと関係していることを示すものでもない。

初めて観測されたアカウントは第1週9、第2週11、第3週96で、複製投稿は各週7件、9件、56件だった。複数の週に投稿があったのは3アカウントにとどまる。採取範囲では、週ごとに顔ぶれがほぼ入れ替わりながら、似たID・表示名と複製行動が観測された。

調査分析の記録では、第1週に7件、第2週に13件取得したプロフィール画面の開設月表示は、いずれも2026年8月であった。画面の取得件数を、そのまま異なるアカウントの数とみなすものではない。第3週に初出した96アカウントの開設月は未確認であり、116全体が同時期に大量作成されたと確定することはできない。
共通するIDと表示名の形式、投票終了後の出現、少ない投稿数、他者の文面の転記。これらは、同じ方法で運用されたアカウント群の可能性を検討する手掛かりとなる。ただし、形式だけが一致する例も含み、共通の運営者や自動投稿を確認したものではない。
| 観測された特徴 | 現時点の評価 |
|---|---|
| 規則的なID・表示名 | 共通する作成方法を検討する手掛かり。ただし、一般利用者の偶然の一致もある。 |
| 複製文面の立場が混在 | 一候補の支持を一貫して増幅する運用とは捉えにくい。混在だけで他の運用目的を除外することもできない。 |
| 低い閲覧数、少ない返信・引用 | 今回の範囲では、大きな到達や活発な相互作用は観測されなかった。 |
| 投票終了後の出現と時間的な集中 | 話題量の多い局面での稼働と整合するが、時刻の重なりだけでは共通運営を確定できない。 |
| 運営主体・自動化の仕組み | 未確認。開設月の記録も点検対象全体にはそろっていない。 |
文面の立場の混在、低い到達、少ない相互作用は、投稿履歴などを作り、将来別の用途に転用するアカウント群という仮説とも整合する。注目やアカウントそのものの価値を資源として扱う、いわゆるアテンションエコノミー型の説明である。ただし、売買、収益化、転用の実態を確認したわけではない。
現時点の集計から、この点検対象を影響力工作と結び付ける積極的な根拠は得られていない。一方で、影響力工作が一候補への一方向の支持に限られるわけでもなく、低い到達や立場の混在をもって関係を否定しきることもできない。観測された規則性と運用目的の推定を分けて扱う必要がある。
次に注目すべきなのは、同じ形式のアカウントが、別の政治的な局面でどのような文面を扱い、どの程度の到達や相互作用を持つかである。今回見えたのは、選挙をめぐる大量の発信の中に、似た形と複製行動を持つアカウントが繰り返し現れたことだった。その変化を継続して確かめる価値がある。
選挙戦への効果を狙ったキーワードとして想定した50近くのキーワードで収集した3回分(8月26日〜9月1日、9月2日〜8日、9月8日夜〜15日)を統合し、同一投稿IDの重複を除いた。検索表示と取得範囲による欠落を含み、全投稿を網羅した調査ではない。
点検対象は、規則Aに一致する日本語アカウントと、表示名テンプレートに一致し、複製を行ったか複製された側にあるアカウントを基にした。形式一致のみとした12アカウントは116の点検対象には含むが、規則Aの文字構造の分析85からは除いた。日本語以外の投稿を行うアカウントは対象外とした。
複製は、URLと空白を除いた本文が先行する別アカウントの投稿と一致し、末尾が絵文字で終わる投稿として整理した。原文の立場を目視分類したのは、第3週の複製のうち原文も第3週に投稿された55件である。
一様性はカイ二乗検定、有意水準5%で点検した。規則Aの数字各位置は85文字、英字は2位置を合算した170文字であり、英字の位置別独立性を検証したものではない。統計的な差を検出できないことと、生成方法が確定することは異なる。
比較には元集計の76,283アカウント・283,470投稿を用いた。割合の分母は、アカウント単位と投稿単位を区別した。閲覧数・反応数は各採取時点の表示値であり、固有の閲覧者数や最終的な到達数ではない。