SOLANETS ELECTION WATCH / SIDE STORY 02
沖縄選を語ったのは、
県内か、県外か。
Day7で残した問いを、地理的属性からたどる。
プロフィールと投稿履歴による追跡調査。
プロフィールから地理的属性を分類できた2,506アカウントのうち、県外は2,053件、81.9%を占めた。沖縄県知事選の両候補に言及したXアカウントを追跡したところ、地理的属性を把握できた範囲では、約8割が県外という分布が見えた。
Day7「08 / ASSESSMENT」では、玉城氏への批判が多数のアカウントに分散していたことを取り上げ、その担い手をたどる追跡調査を別項で取り上げると予告した。本稿は、その結果である。対象は、同期間に採取した投稿のうち、玉城氏・古謝氏への言及を確認した7,941アカウントである。
当社はプロフィールによる分類に加え、地理的属性を分類できなかった層から600アカウントを抽出し、投稿履歴を調べた。県内と県外では、アカウント数だけでなく、投稿量や語られる主題にどのような違いがあったのか。二つの調査を通して、Day7で残した問いをたどる。
地理的属性の判明分に占める県外
プロフィールから地理的属性を分類
判明分のうち県外と分類
投稿履歴を調べた標本
プロフィールの所在地欄と自己紹介から、地理的属性を分類できたのは2,506アカウントである。所在地欄に記入があっても、「日本」のように県を特定できない記述は分類に用いていない。居住地や出身地を表す言葉を整理すると、内訳は次のようになった。
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| 区分 | アカウント数 | 判明分に占める割合 |
|---|---|---|
| 県外 | 2,053 | 81.9% |
| 県内 | 333 | 13.3% |
| 県出身・縁故 | 73 | 2.9% |
| 海外 | 47 | 1.9% |
| 合計 | 2,506 | 100.0% |
「県出身・縁故」には、沖縄出身で県外に住む例のほか、元在住や二拠点など、沖縄とのつながりが読み取れる例を含む。県外とは別の区分として集計した。
候補者別・立場別に見ても、判明分では県外が多数を占めた。県外の割合は、玉城支持で77%、玉城批判で85%、古謝支持で73%、古謝批判で74%である。とりわけ玉城批判では、判明分1,033アカウントのうち874件が県外だった。Day7で取り上げた言説の広がりに、発信者の地理的属性という補助線を引く結果である。
調査は、プロフィールの分類と、不明分の投稿履歴調査を組み合わせた。前者では、県内の市町村、各都道府県、海外の地名と、「在住」「移住」「出身」などの表現を照合した。後者では、プロフィールで分類できなかった5,435アカウントを対象に、標本から分布を推定した。
標本は、投稿から推定した陣営の3区分と投稿量の3階級を掛け合わせた9層から、計600アカウントを無作為に抽出した。投稿量の多い層を厚く抽出しているため、集計時には各層の規模を反映した重み付けを行った。
投稿履歴では、選挙について何を語ったかではなく、日常的にどこで生活・活動しているかを読む。「沖縄」「辺野古」と投稿しただけでは県内としない。居住についての直接的な言及、日常生活の記述、地域での参加行動、地元メディア、方言、位置情報などを手がかりにした。複数の種類の証拠を照合することを基本とし、弱い手がかりと補助材料による低確度の判定は区別して扱い、材料が足りない例は判定不能に残した。
判定には、大規模言語モデル2系統と、Sola.comのサイバーセキュリティー部の認知戦・SNS分析アナリスト2名による目視確認を組み合わせた。目視確認は、プロフィールの分類結果を伏せた校正用50アカウントと、調査標本から選んだ51アカウントを分担して実施した。校正用50件では、目視で判定できた27件中26件が参照分類と一致した。残る1件は県外と県出身・縁故の区分の違いであった。
全体合成では、プロフィール取得不能で標本抽出の対象から外れた25件にも、取得できた不明分5,410件と同じ推定割合を適用した。
600アカウントの最終判定は、県内31、県出身・縁故1、県外113、判定不能455となった。ここから各層の規模を反映すると、不明分の県内率は4.4%(95%信頼区間の幅は±1.7ポイント)、県外率は20.4%(±3.9ポイント)、判定不能は75.1%(±4.1ポイント)と推定された。県出身・縁故も少数含まれる。
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立場別では、玉城批判の県内率の点推定が最も低かった。ただし、立場別の信頼区間は重なっており、この推定から順位や差を確定することはできない。信頼区間は標本抽出に伴う不確実性を示すもので、自己申告の不正確さや判定の誤り、採取漏れをすべて織り込んだ幅ではない。
プロフィール判明分の実数に、不明分5,435件への推定を加えた全体像を下表に示す。ここでの割合は7,941アカウント全体に対するものであり、第1節の判明分だけの割合とは分母が異なる。
| 区分 | プロフィール判明分の実数 | 全体合成の推計件数 | 全体合成の割合 |
|---|---|---|---|
| 県内 | 333 | 574 | 7.2% |
| 県出身・縁故 | 73 | 77 | 1.0% |
| 県外 | 2,053 | 3,159 | 39.8% |
| 海外 | 47 | 47 | 0.6% |
| 判定不能 | 0 | 4,084 | 51.4% |
| 合計 | 2,506 | 7,941 | 100.0% |
全体合成の件数は、分類できたアカウントを一つずつ数えた実数ではなく、判明分と標本推定を合成した丸め値である。不明分の推定の幅は、上記の95%信頼区間に示した。
アカウントの数と、そのアカウントがどれだけ発信し、投稿が何回表示されたかは別の量である。プロフィール判明分に限って比べると、県内の割合はアカウント数では約13%だが、投稿数では約26%、閲覧数では約39%となった。県内の発信は、アカウント数以上の比重を持っていた。
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対照的なのが、玉城支持と玉城批判である。玉城支持では、県内と分類されたアカウントはその判明分の17%だが、投稿数では37%、閲覧数では53%を占めた。アカウント数では少数でも、投稿の累積表示数では過半に達していた。
一方、玉城批判では県内の割合がアカウント数で11%、投稿数で25%、閲覧数で37%だった。県外と分類されたアカウントによる投稿は、投稿数の72%、閲覧数の58%を占める。こちらは投稿量でも累積表示数でも、県外の比重が大きかった。
古謝氏をめぐる投稿でも、県内の割合はアカウント数より投稿数・閲覧数で大きくなる。県内が少数であるという同じ集計結果でも、発信の量まで同じ割合とは限らない。アカウント数だけで言論空間を捉えると、こうした違いを見落とす。
プロフィール判明分の投稿を比べると、使われる語にも偏りが見られた。県内側では、地域の自己認識や選挙運動の現場、県政に関わる語が目立つ。県外側では、事故や全国的な政治対立に関わる語が挙がった。
| 県内側に偏っていた語の例 | 県外側に偏っていた語の例 |
|---|---|
| ウチナーンチュ、県連、県政、琉球 | 事件、転覆、左翼、戦争 |
これは調査分析にある語例の抜粋であり、頻度順のランキングではない。同じ候補者についての言及でも、何を論点として語るかには違いがあった。
ただし、語彙による所在判定は別の問題である。調査では、投稿の言葉や接触先だけから、プロフィールに手がかりのないアカウントを実用的な精度で分類することは難しかった。そこで不明分は、生活の手がかりを読む投稿履歴調査へ進めた。語彙の差は、所在地を決める根拠としてではなく、分類後の集団で見られた主題の違いとして読むことが適切である。
地理的属性を把握できた2,506アカウントのうち、2,053件・81.9%が県外だった。これがDay7からの追跡で得た中心的な所見である。プロフィール判明分では、両候補への支持・批判のいずれでも県外が多数を占め、玉城批判ではその割合が85%となった。
同時に、県内アカウントは数に比して投稿量・閲覧数の比重が大きかった。玉城支持では、県内と分類されたアカウントの投稿が、判明分の累積表示数の過半を占めた。県内と県外で語られる主題にも違いが観測された。
沖縄の候補者をめぐるX上の言説は、どのような生活圏・活動圏のアカウントによって形づくられていたのか。本調査は、その構成をアカウント数、発信量、主題の三つから描いた。県外のアカウントが大きな割合を占めることと、県内の発信がその数以上の比重を持つこと。この二つを合わせて見ることで、Day7で観測した言説の広がりを、より具体的に捉えられる。
本稿の図表では、①分母が全体かプロフィール判明分か、②数えているのがアカウント・投稿・累積表示のどれか、③分類結果の集計か標本からの推定か、を分けて示した。
選挙戦への効果を狙ったキーワードとして想定した50近くのキーワードで収集した。キーワードは日本語・中国語・英語で、採取はX検索画面の「最新」タブに基づき、投稿全体を網羅するものではない。対象期間は2026年8月26日〜9月1日16:53(日本時間)で、閲覧数・反応数は採取時点の値である。閲覧数は固有の読者数や読者の所在地を表さず、投稿量も有権者の支持分布とは異なる。
「玉城支持」「玉城批判」などは、その立場の投稿を1件以上したアカウントの集合で、同じアカウントが複数の集合に含まれ得る。陣営も投稿内容から機械的に推定した区分である。
地理的属性は自己申告や投稿の手がかりに基づく生活圏・活動圏の分類であり、各投稿の送信地点、住民登録、有権者資格の確認ではない。県外という区分は工作や不正を意味せず、発信動機や組織的な連携の有無は本調査の対象としていない。
出典:株式会社Sola.com「沖縄知事選2026 X投稿の域内・域外発信比率」中間分析(2026年9月4日)、第三工程の目視結果と層別推定(2026年9月11日、9月22日確定分を反映)、方法論設計書および同日更新の集計値。