サイバー分析の三世代の変遷 — 総合格闘技から、人馬一体、そして「AIとの対話」へ

By |7月 17th, 2026|サイバー・開発部, お知らせ, お知らせ, 今週のSolacom|

TECH ESSAY / SECURITY OPERATIONS サイバーしごと三世代論— 総合格闘技から、人馬一体、そして「相棒との対話」へ 手作業の職人芸、統合ツールの半自動化、そしてAIエージェント。世界のセキュリティ業界で語られる「三世代」の整理を下敷きに、三つの世代を現場で乗り継いできた実務者が、それぞれの「乗り味」を語ります。 第一世代 shell と職人芸 第二世代 統合ツールと半自動化 第三世代 AIエージェントとの対話 はじめに サイバーセキュリティの調査・分析という仕事は、この20年ほどで大きく姿を変えてきました。私自身、この変化を現場で乗り継いできた一人ですが、世界のセキュリティ業界の議論を眺めてみると、この変遷はおおむね三つの世代に整理して語られているようです。 第一世代:人間の職人芸と手作業の時代 第二世代:統合ツール・半自動化(SOAR/プラットフォーム化)の時代 第三世代:AI駆動・エージェント型の時代 米Gartnerは2025年6月に「AI SOC Agents」を正式なカテゴリーとして命名し、AI駆動型のSOCソリューションを2026年のトップトレンドの一つに挙げました。年代でいえば、アナリストが全アラートを手でさばいていた時代が2015年頃まで、SOARがプレイブック駆動で定型作業を肩代わりした自動化の時代が2015〜2022年頃、そしてAIが事前定義のプレイブックなしにトリアージから調査、対応提案まで自律的にこなすエージェント型の時代が2023年から——という区分が定着しつつあります。 第一世代 手作業・職人芸 〜2015年頃 全アラートを人がトリアージ 第二世代 統合・半自動化 2015〜2022年頃 SOAR・プレイブック駆動 第三世代 AI駆動・エージェント型 2023年〜 自律的トリアージ・調査 図1|SOC自動化の三段階(Gartner「AI SOC Agents」命名は2025年6月) きれいに整理されたものだなあと感心しつつ、この三つの世代、現場で乗ってきた身としてはそれぞれに全く違う「乗り味」がありました。本稿では世界的な整理を下敷きに、その乗り味の話をしてみたいと思います。 第一世代:総合格闘技の時代 GENERATION 1 〜2015年頃|手作業と職人芸 第一世代の調査業務は、人間の専門知識と手作業の上に成り立っていました。アラートを一件ずつ手でトリアージし、サイロ化された複数のツールの間を椅子ごとぐるぐる行き来する(海外では「スイベルチェア運用」なんて呼ばれています)。検知はシグネチャと単純な相関ルール頼み。侵入テストの世界も同じで、スキャン、スニッフィング、ブルートフォース、ファジング、ペイロード生成——局面ごとの無数のツールを、テスターが自分の手と頭で組み合わせて戦う世界でした。 図2|「スイベルチェア運用」— 人がツールの間を回遊する アナリスト ログ検索 パケット解析 脅威情報照会 チケット起票 要するに、shellをバリバリ叩きつつ、多岐に渡る技術知識でニャンニャンやる、総合格闘技のような世界だったわけです。それぞれの職人が得意の「XXスペシャル」みたいなツールボックスや必殺コンボを持っていて、差し詰め『刃牙』のトーナメントみたいな感覚。道具と身体が直結した、原初的な人馬一体感がありました。アラートの量が人間の処理能力を超えるまでは、この体制で確かに回っていたのです。そして、あれはあれで実にオモロかった。 第二世代:高出力マシンの時代 GENERATION 2 2015〜2022年頃|統合と半自動化 2015年頃から、風景が変わり始めます。Kali [...]