OVERRIDE 2022 / INFORMATION SPACE STUDY 01

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INFORMATION SPACE STUDY / 01

分析上の前提

本稿は、Sola.comが2022年当時に行った独自調査と観測記録を当時の分析アーカーイブ・公開情報から文章と図版を新たに構成しています。

一つの画像には、一つの意味しかない。私たちは普段何気ないSNSの投稿にそう考えがちです。しかし、インターネット上を流通する画像や映像の意味は、それに添えられた短い説明によって変わる。

誰が写っているのか。どこの軍の車両なのか。何が起きる直前なのか。誰が攻撃し、誰が被害を受けたのか。画像そのものが変わっていなくても、説明が変われば、受け手が理解する出来事は別のものになる。

2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻が始まったとき、日本語圏の情報空間でも、このような「意味の上書き」が繰り返されていた。

なぜ2022年1月から注視していたのか-脅威情報・OSINTチーム

Sola.comが注視していたのは、国境周辺におけるロシア軍の集結だけではない。2021年中盤以降、ウクライナの政府機関・行政機関が運用するウェブサイトや情報基盤に対するサイバー攻撃、ページ改竄、侵入の痕跡も、情勢悪化を示す重要な兆候として追跡していた。
2014-2015年のクリミア信仰でも近代のハイブリッド戦ではサイバー攻撃の予兆と印象操作が軍事的イベントの際に見られる前例があったからだ。

2022年1月13日から14日にかけてそれは起こった。
ウクライナ外務省、教育科学省など複数の政府系サイトが攻撃を受け、トップページに挑発的なメッセージが表示された。ウクライナ政府の当時の発表では、70を超える政府系リソースが攻撃対象となり、そのうち10件で不正な介入が確認されたとされた。一方、初期調査の段階では、サイト本体の内容変更や個人データ流出は確認されていないとも説明されていた。

JAN 13-14政府サイトへの改竄

複数の政府機関・地方政府サイトに挑発的メッセージが表示され、他の政府サイトも予防的に停止された。

JAN 13破壊型マルウェア

Microsoftは、政府機関や政府と関係する組織のシステムで、ランサムウェアを装った破壊型マルウェアを検出した。

JAN-FEB地方行政サイトの異常

Sola.comの独自観測では、政府機関だけでなく地方行政サイトにも改竄・侵入を疑わせる痕跡が記録された。

Microsoftは1月15日、1月13日にウクライナ国内の複数組織で破壊型マルウェアを検出したと公表した。このマルウェアは身代金要求型に見せかけながら、復旧機構を持たず、感染端末を使用不能にすることを目的としたものと評価された。米国CISAも1月18日、政府サイトの改竄と破壊的マルウェアを受け、組織へ即時の防御措置を呼び掛けている。

同じ情勢の中で、別々に検証する

政府サイトの改竄、破壊型マルウェア、DDoS、情報操作は、同じ緊張局面で連続して現れ得ます。ただし、初期段階の公開情報だけで、すべてを同一主体・同一作戦によるものと断定することはできません。本稿では、技術的事象と情報空間への効果を分けて扱います。

当時のFacebook投稿に残された実画面

Sola.comの脅威情報チームの一人のH氏は当時、ウクライナ外務省サイト内で確認した異常ページの実画面と、ページ上に表示された公開日時の検証過程をFacebookでも共有していた。

FIELD RECORD / 15 JAN 2022

改竄を確認した実画面

ウクライナ外務省のサイトでは複数の侵害の痕跡が見られた。

ウクライナ外務省サイトの共通ヘッダー下に異常な文字列が表示された画面。赤い枠と矢印で本文領域が示されている。
A外務省サイトの全体表示 公式サイトの外観を保ったまま、本文領域に通常の記事とは考えにくい数字列と文字列が表示されている。赤枠と矢印は当時の確認時に加えられた注記。

異常な数字列、文字列、ウクライナ語の公開日時が表示された本文領域の画面。
B本文領域の記録 異常な数字列・文字列と、2022年1月14日を示すウクライナ語の公開日時が同じ画面内に確認できる。

DEFACEMENT MESSAGE / JAN 2022

改竄画面に表示された脅迫文

改竄時に表示された多言語の脅迫文と、その内容を日本語で確認した当時の表示記録。前掲のサイト画面とは役割が異なり、ここでは攻撃者が受け手へ提示したメッセージそのものを読む。

禁止記号とウクライナ国旗、ウクライナ語・ロシア語・ポーランド語の脅迫文が表示された改竄画面。
C多言語で表示された脅迫文 ウクライナ語、ロシア語、ポーランド語で、個人データの公開や端末データの破壊を示唆する文言が表示されている。

改竄画面の脅迫文を日本語で確認した表示記録。個人データの公開と端末データの破壊を示唆する内容が訳出されている。
D日本語での内容確認 当時の翻訳表示を誌面用に整理したもの。原文の意味を確認する補助記録であり、翻訳そのものを技術的帰属の根拠とはしない。

読解上の注意 この表示は威嚇と心理的効果を狙ったメッセージである。文面に書かれたデータ窃取・破壊が実際に全対象で実行されたかどうかは、画面表示とは別に技術的検証を要する。

軍事緊張と情報空間を同時に見る

Sola.comでは、社会、安全保障、企業活動に重大な影響を与える可能性がある事案について、必要に応じて独自の情報収集と分析を行っている。ウクライナ問題の主な観測期間は、2022年1月4日から3月5日までである。

当時はTwitterを中心としながら、Facebook、YouTubeなど複数のプラットフォームを横断した。個々の投稿だけでなく、同じ主張がどこから発信され、誰に引用され、どの媒体を経由し、どのような説明を加えられながら広がったかを確認するためである。

FIG.03 主な観測期間

2022.1.4

観測開始

2.22

一部対象で投稿量の変化

2.24

全面侵攻開始

3.5

主な対象期間の終点

2月22日の変化は日本語圏全体を示すものではなく、当時の一部観測対象に関する記録である。

Omni Oculusは「判定機」ではない

Sola.comでは、自社製分析ツール「Omni Oculus」等を用い、言説の流れや関係を整理・可視化していた。特定の投稿を自動的に正しい、誤りと判定するものではない。投稿量、語句、共有URL、引用関係などを整理し、人間が確認すべき場所を示すための地図である。

FIG.04 観測事実から帰属評価まで
公開された投稿日時・文章・URL・引用関係
投稿量・頻出語句・共有先・拡散速度の変化
アカウント間の接続、協調的拡散の可能性
運用主体・指揮命令・国家機関の直接関与
別種の証拠が必要
同時期の投稿や相互引用は調査の端緒になるが、指揮命令関係の証明そのものではない。

影響力はフォロワー数だけでは測れない

フォロワーが少ないアカウントの投稿でも、別の大規模アカウントが引用すれば二次、三次の拡散が生じる。反対に、フォロワー数が多くても、反応が少なく、活動実態のないフォロワーが多ければ、数字ほどの影響力を持たないこともある。

今回のポイント

誰が最初に発信したかだけでなく、誰が受け取り、どのような説明を付け、次にどの集団へ渡したかを見る。情報空間における影響力は、中継能力にも現れる。

確認すること、確認しないこと

公開情報から確認する
  • 投稿日時と文章
  • 引用、返信、URL共有
  • 投稿量・語句の変化
  • 公的機関の公開文書
投稿だけでは確認できない
  • 投稿者の真の意図
  • 外部からの直接指示
  • 金銭や役割分担
  • 国家機関による運用